代理出産 法規制はなお慎重に検討を
不妊に悩む夫婦にとって失望する内容だろう。日本学術会議の「生殖補助医療の在り方検討委員会」は代理出産の法律による禁止などを提言した報告書最終案をまとめた。 十項目の提言はほかに、営利目的の代理出産は処罰する、代理出産の危険性チェックなどのために公的な管理下で「試行」(臨床試験)の道は残す、などの内容を盛り込んだ。 営利目的を処罰するのは当然としても、代理出産の是非については賛否が大きく分かれており、提言がすんなり法整備に結びつくとは考えにくい。 病気で子宮を摘出したなどの理由で妻以外の女性に出産を頼む代理出産については、日本産科婦人科学会が倫理指針で禁じている。ただ、民法で想定していない事態のため、法整備を求める声は根強い。今回の提言も初めてではない。 厚生労働省の部会は二〇〇三年、不妊治療ルールに関する最終報告書をまとめ、代理出産を禁止するとした。これを受けて政府は法案提出を目指したが、与党内の反対意見に阻まれて棚上げになったままだ。 このため法務、厚労両省があらためて学術会議に議論をゆだねた形になった。 代理出産への反対論は、第三者に妊娠出産のリスクを負わせる、家族関係が複雑になるなどの点が挙げられる。学術会議は医学的マイナス面の例として、妊娠中の異常が通常より高い確率で起きる可能性が指摘されている、などとする。 確かに理由は理解できる。出産できないのなら、養子縁組などを考えてはどうかという意見も説得力を持つだろう。 一方で、どうしても血のつながりのある子どもがほしいという気持ちも痛いほど分かる。 これまで八例の代理出産の実施を公表した諏訪マタニティークリニック(長野県下諏訪町)の根津八紘院長は「子宮のない女性が、子宮がある女性の助けを借りて子どもを得ることの、どこに悪が存在するのか」と反発し、新法ができても従うつもりはないと述べている。 米国に渡って代理出産に臨んだ日本人夫婦は過去に五十組以上という。法律で禁止されても臓器売買のように水面下に潜るだけという指摘があり、実効性が伴わない可能性も高い。 「試行」についても、まるで実験みたいになったのでは人間としての尊厳にかかわる。 代理出産が注目されるようになったのは、米国人代理母に出産してもらったタレントの向井亜紀さん夫妻の存在が大きい。東京高裁は夫妻の子とした出生届を受理すべきだと決定し、その後最高裁で覆されたが、社会の関心を高める結果となった。 厚労省が〇七年に行った国民意識調査では「代理出産」の容認派が54%に上り、初めて半数を上回った。こうした世論も無視することはできまい。 賛成、反対のそれぞれに理由があり、難しい問題である。一気に法規制に進むのではなく、国会でさらに慎重に検討していくべきだろう。
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